読書兎の書庫

読書、音楽、映画、雑記

「この世界の片隅に」が何故こんなにも素晴らしいのか。

たまたま連れられて映画を観てきた。

アニメ映画である。「この世界の片隅に」というタイトルである。戦時中の内容だということと、漫画が原作にあるということしか知識はなかった。

観て、これは、なんということか、と思った。原作の内容も素晴らしい。映画の展開も素晴らしい。語り尽くせぬテーマでもある。

しかし、これは得体の知れない、それとは違うなにか?なんじゃないの?俺が感じているのは。。。

人は、何かが面白いやら面白くないやら、ことばで、あらわす。

人に話しかけたりして、あれがすごかったよとか、これはやばかったよなどと言う。何がやばかったのか確認するために何度も映画を観たり、原作を読んだり、監督の他の映画を観たり、資料を探して納得しようとする。

あーこれはあれだ、こーゆーことだと言いたい訳である。

しかし本来、モノを創ることを志す者はことばでは言い尽くせない感じをそこに込めたいがあまりモノを創るのである。イメージである。風景である。五感である。

あーあれはなんだ、簡単に言うとこーゆーことだ、と要約されて、圧縮されて、作品が人のあたまでまとめられてそれもイメージになる。キャラクターに落とし込まれる。監督に落とし込まれる。或いはジャンル分けされる。

しかし、本来人の作ったものはどんなものでも、その人にしか作り得ない、個性的なものだ。まとめられて、箱に入れられて、ことばに置き換えられて、でも、そうされる前にそれは、全く違うものだった。

経験したとき、驚く。びっくりして、何だったのか考える。作品をそのままを受け入れることが出来ればいいけど、なかなかそうもいかない。

たぶんこの作品が素晴らしいと思うのは、なにもそんなことは劇中では言わずに、そんなことを考えさせる、ことだ。

映画のそこかしこに、映画の、つぶ、を観ていた。かがやいていて、きらきらしている。キャラクターも、風景も、声も、喜びも悲しみも、ぜんぶ一緒になって。。そんな映画。生きている感じ。生きているものを尊んでいる、本当に普通のものを大事にしている、そんな映画でした。