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「この世界が消えたあとの科学文明のつくりかた」①

 

この世界が消えたあとの 科学文明のつくりかた

この世界が消えたあとの 科学文明のつくりかた

 

 

破局かなにかで人類が去ったあとの世界の荒廃と、その後の立て直しかたが、詳細に、丹念に描かれている。

なによりも、今現在の何が、その問題に繋がっていくのかが、書かれてあってすごい。例えばよく言われる地球温暖化は、イメージとしてはなんか地球があったかくなってるって感じだけど、この本では、そうは書かれていない。

 

人類は地下を掘削して、過去の時代に蓄積され埋蔵された化学エネルギーを掘りだしてきた。

こうした化石燃料、つまりすぐさま燃える炭素の塊は、古代の森と海洋生物の死骸が腐敗してできたものだ。

すなわち、はるか遠い昔の地球に降り注いだ太陽光をとらえることで得られた化学エネルギーだ。

この炭素はもともと大気から得られたものだが、問題は僕らがその貯蔵物を急速に燃やし過ぎているため、何億年間分もの固定炭素がわずか百年あまりで大気中に放出され、工場の大煙突や車の排気ガスとして吐きだされていることにある。

これは放出された二酸化炭素を地球のシステムが再吸収できるよりもずっと急速であり、今日では十八世紀初めよりも約四十%多い二酸化炭素が空気中にある。

二酸化炭素のこの高い濃度がおよぼす影響の一つは、太陽の熱が温室効果によってより多く地球の大気にとらえられ、地球温暖化へとつながることだ。そうなると今度は海面が上昇し、世界中で気候パターンに混乱が生じ、場所によってはモンスーンの洪水がより頻繁に大規模で起こるようになり、別の地域は干ばつに見舞われ、農業に深刻な余波が生じる。

 

 

こんな調子で破局後、まで話が展開していく。特にこの後に書かれいる、

 

破局後の世界は、この地球のシステムのなかにすでに蓄積された勢いから、つづく数百年間は数メートルの海面の上昇を経験する可能性が高い。

温暖化によってメタンを封じ込めてきた永久凍土が解ける、あるいは氷河が広範囲で融解するといったドミノ効果が引き起こされれば、その影響はさらに悪いものとなるだろう。

二酸化炭素濃度は大破局後は下がるものの、かなり高い値で推移しつづけ、産業革命前の状態には何万年間も戻らないだろう。

そのため、僕らの時間の尺度では、もしくは後世の文明の尺度でも、地球のサーモスタットが強制的に吊り上げられたこの状態は基本的に永久のものとなり、現在の能天気な生活様式は、僕らのあとに世界に住む人びとに長期にわたって陰鬱な遺産を残すことになる。

 

という部分では、南極の氷の変化など、すでに現在少し起こっているのでは…という箇所もある。

と、少し書き出しただけでもはっきりと明確に書かれていて、驚く。